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千里眼
就職の面接で特技を訊かれた時に、
『千里眼です』
と答えて楽しそうな顔をした管理職がいたのは今の職場だけでした。
本当に特技なのだから正直に言っていたのですが……。
どうやら作戦は失敗だったようです。
でもいいです。
私は今の職場が気に入っています。
「なあ、探して欲しい奴がいるんだが」
今日もまた、先輩がやってきました。
名前を聞いて、その人の顔を思い出せればそれで十分です。
次に私の視界に映るのはその人の居る場所。
コンクリートの壁も私の目を阻みはしません。
「サンキュ。じゃあな」
先輩が私の仕事場から出て行ってから数十秒。
するりと高校生の男の子が入ってきました。
彼は哀しそうな顔で私に訊きます。
「……間に合うのかな?」
「大丈夫ですよ」
私は私より少し背の高い男の子の頭を撫でてあげました。
「君が心配することは何もありません。空からゆっくり見ていてください」
ちょっとだけ笑ったその子は、そのままスゥッと消えてしまいました。
いつものことだったので私は特に気にしませんでした。
彼も私の就職の面接官の1人です。
就職の面接で、質問の最後に私は管理職から訊かれました。
『ところで私たち面接官のうち、男性は何人かしら?』
私は周りを見回しました。
今話している初老の管理職の女性が1人。
30代っぽい女性が1人。
やけに若い女性が2人。
それから、なぜかずっと黙って座っていた高校生の男の子。
『この子を入れれば1人じゃありませんか?』
『はい、合格』
にっこり笑って初老の管理職は私に言いました。
『彼が見えることがここの雇用の最低条件です』
こうして私は今の立場を手に入れたのでした。
今の職場は、不思議な人がいっぱいです。




