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キミのぬくもり5センチ手前
キミのぬくもりは、いつの頃からかいつもわたしの5センチ手前にある。
あんなにわたしのぬくもりと近しかったキミのぬくもりは、いつのまにか。
わたしから、5センチ手前に──離れた。
「あれ?」
「何だよ?」
「あんた、背、伸びた?」
キミにお弁当の包みを渡しながら、わたしは思わずキミの頭に手を伸ばし、自分の背丈と比べる。
つい一ヶ月くらい前までは、確かにキミとの背を計りに掛けていたわたしの指先は自分の目線より下だったのに、今はそれが上向きになった。
キミはお弁当の包みを受け取り、それが傾かないように慎重にカバンに入れながら、わたしの方は見もせず言った。
「当たり前だろ。もう、中学生なんだからな」
その、気取ったような勿体つけたような物言いに、わたしは何だか意味もなく腹が立つ。
「中身は大して変わってないくせにね」
「うるせーなぁ!口うるさくいつまでも子ども扱いすんなよ」
キミはふくれっ面になると、行ってきますも言わずにバタン、と玄関から出て行った。
「子ども扱いすんな、とは、言うようになったわね……」
こちらも同じように、ふくれっ面を作り腕を組みながらちょっと怒った声で呟いた。
──子供じゃないけど、大人じゃない。
──大人じゃないけど、子供じゃない。
そんなキミのぬくもりは、気がつけばいつもわたしから5センチ手前にある。5センチ手前に離れていった。
──この距離を愛しく思うべきなのかな、寂しく思うべきなのかな。
わたしは人差し指と親指で5センチの距離を作り、それを目の高さにそっとかざして、小さく笑いながらそう思った。




