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沈黙の世紀 ~オピドール異聞 -前-
かつて、世界にはふたりの神が存在したという。
光神は陽光に例えられ、広がり行く力──始まりと繁栄を司った。
闇神は月光に例えられ、収束し行く力──終わりと衰退を司った。
すべての生命は、かの存在の手中に在るとされ、
限りある生を終えた死者の魂は神の手許に帰り、再び、地上に転生すると人々は信じていた。
自身の死を怖れる者、永遠の生を望む者は存在しても、
その「理」自体を疑う者など、誰一人存在しなかったのだ。
だが、数世紀前、人々の認識は覆された。
死に行く者より、新しく誕生する生命の方が、著しく数が減ってしまったのだ。
都市が人口を維持するには、一組の夫婦から二人の子が誕生しなければならず、
成人までの生存率を考慮するなら、更に、多くの子供が生まれなければならない。
実際、数十年前までは五人兄弟という家庭も、それほど珍しい存在ではなかった。
ともあれ、突然、不可解なまでに出生率が低下したことだけは、覆しようの無い事実である。
あるいは、それは当然の成り行きであった、と言えるかもしれない。
右肩上がりに増加する人口……
限られた土地が養える生き物の数は、残念ながら、最初から決められているようなものだ。
如何に世界最大の大陸とはいえ、許容量を遥かに超えた人口を賄うだけの収穫なぞ望めない。




